8月はactionとre-actionの多い月でした。進んで石を投げられやすい場所にあえて進もう……と思ったけど実際投げられてみるとそれなりにムカつくものですね(笑)。小さい石でも当たれば痛いのです。とはいえ「真夏の決戦」企画で審判団を引き受けてくださったお三方、それから対戦相手のカトリヒデトシさん、みなさんとても寛容で大人だなあと感服しました。これに懲りずまた何かやらせていただけたら嬉しいです。USTを観てくださった方、チラシの配布や技術的な面で協力してくださった方、応援のメッセージやメールをくださった多くの方々、ありがとうございました。
こうゆうのはライブで観てこそだと思いますが、いちおう映像は以下のURLで観られます。ハッシュタグは #love11 。このブログに載せたフォーメーション表と一緒に見ると分かりやすくなると思います。前半の音声が途切れてしまったところは、東京デスロックの俳優・夏目さんが『2001年宇宙の旅』のあのシュトラウスのテーマ曲に乗ってちゃー、ちゃー、ちゃちゃーんと最終ラインから前線までピッチをゆっくり上がっていってゴールに雪崩れ込む、とゆう(本人とは無縁の勝手な)感動的な演出のはずでした。
http://www.ustream.tv/channel/pull-live-on-ust
それにしても少々毒を吐かせてもらうと、今回の企画へのre-actionも含めて、「演劇」の一部の人はコンプレックスがありすぎるんじゃないかな? 自分のいる場所を「内輪」だと思うんだったら、相対化するためにもっと「演劇」以外の表現技法を持ったアーティストたちと積極的に接触・交流する中で揉まれればいいと思う。「演劇」内部の競争とかではなくて。強くて勇ましく鉄砲を撃てるのは分かったけど、わたしにはまるで興味のない種類の蛮勇です。勇気はここぞとゆう時のためにとっておけばいいのでは? わたしごときをこそこそ物陰から撃つのではなく、もっとちゃんと強いモノを狙って真摯に撃てばいいと思います。あと老婆心ながら、単純に疲れてる人はゆっくり休んだらいいと思う。ツイッターとか読んでる場合じゃないし。ただでさえ、この暑さなんだから電源はoffで。
それにしてもGPS搭載の時代にも関わらず(だからこそ?)、自分のいる位置を冷静に、過不足なく把握するのは結構むずかしい。「ユリイカ」9月号で内野儀さんが書いていたように、ツイッターで少々盛り上がったからといってそこが世界の中心にはやっぱりならないのだ。この「ユリイカ」の特集に関してはいろいろ思うところもあり、昨夜寝不足&ほろ酔いでうっかり呟いたけど(早速さる筋に把捉された。ツイッターって怖いなあ、笑)、ひとつどうしても違和感があったのは、あの中で「下の世代」と呼ばれている人たちの中にも岡田利規=チェルフィッチュを継承しようとしている人はいるのではないか?とゆうこと。それもよくある表面上の語り口の模倣とかではなくて、もっと本質的な部分で《体感》してる人たちはいると思うけど、まあ、でもああやって書くことでハッパを掛けるとゆうか、若者を挑発したいとゆう編集部の意図もあったと思うし、なにも今焦ってそれについて何かわたしが言う必要もないことなので、じっくりやっていけばおのずと様々なことが証明されてくるだろうと思います。何事も時間はかかるものです。
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一方で話は変わりますが、わたしは「演劇」とゆうジャンルにそこまでの愛着がないとゆうことも数(観劇数)を浴びるうちに分かってきました。結果的にどうなるかは別にして、自分の意志としては「演劇」に骨をうずめるつもりはないです。たとえ「演劇」とゆうジャンルが滅んでも人は生きていくし、何かをやるだろう。そのやむにやまれぬ表現衝動にこそ興味があります。ただ結果的に「演劇」畑で死ぬことになっても構わないし、その屍が多少なりとも肥料になるのだったらそれはそれでいいとも思っています。
ともかく今のところは修行のつもりでそれなりの数を観ていて、今月は以下のような感じでした。時間とお金と体力は浪費したけど、たしかな収穫もあった。
■東京デスロック『2001-2010年宇宙の旅』@キラリ☆ふじみ
■TOKYO PLAYERS COLLECTION『パーティが始まる』@王子小劇場
■シアター・メトロノーム『名無しのエリーゼ』@東京芸術劇場
■コープス『ひつじ』@東京芸術劇場 ×2回
■15minutes made vol.9@池袋シアターグリーン
■快快×B-Floor『Spicy, Sour, and Sweet』@東京芸術劇場
■PLAT-formance『express』@王子小劇場
■ロロ『ボーイ・ミーツ・ガール』@王子小劇場 ×2回
■たらったたらったんキュレーション『気まぐれな夜のパレード』@MAREBITO
■時間堂+スミカ『のるもの案内』@no smoking cafe MODeL T
■少年王者舘『ガラパゴス』@下北沢ザ・スズナリ
■ガレキの太鼓『吐くほどに眠る』@APOCシアター
■神里雄大ENBUゼミクラスの発表@ENBUゼミ
■FUKAIPRODUCE羽衣ライブ@吉祥寺MANDA-LA2
■キリンバズウカ『ログログ』@シアタートラム
■原美術館『BLANK MUSEUM』
■鳥公園『乳水』(10分間のショーイング)@アサヒアートスクエア
■ペピン結構設計『マルチメディア』@こまばアゴラ劇場(今夜予定)
鳥公園はわずか10分間を観るためだけに浅草に行ったけど、その甲斐を十二分に感じさせてくれるものでした。今回あらためて浅草で次回作『乳水』のショーイングを観てみて、鳥公園の作・演出の西尾佳織に対してほんのり抱いていたある種の信頼感は、やはり的外れではなかったなと思います。もちろんわずか10分の短い公演だったけど、それでも大きな余白を感じたのでした。鳥公園の『乳水』本公演は9月23日〜26日に日暮里d-倉庫にて。
余談ながら、作家に対する信頼感とゆうのは、もちろんその作品をつくる技術に裏打ちされるものではあるんだけども、でも技術だけじゃない。もっと倫理なり言葉なりを孕んでいるものです。ここで言う倫理とは、決して道徳的な意味のそれではなくて、やむにやまれぬ表現者としての、世界を(他者を)なぞる手つきのようなもののこと。もちろん、それがあるからといって次の公演が必ずうまくいくとはかぎらないけど(努力も運も作用する)、核となる倫理を持っている人は、長い目で見た時にしぶとく生き残るんじゃないかな。たとえ「演劇」が滅びることになったとしても。目先の評判とゆうのは、わたしにとってはスパイス程度のものにしか感じられません。
今回例えばマムシュカ東京とゆう、ああいうショーケース的な完全アウェイな場所で短時間の公演を打ったからといって、それが即座に知名度や集客に繋がることはほとんど考えられないだろう。それでも様々な場所にああして痕跡を残していくことが、積もり積もって大きな実を結ぶかもしれないってことは、信じていい気がします。10年後、20年後に自分の人生やカンパニーがどうなっているかなんて誰にも分からない。もちろん表現者としての体力を徐々に身に付けていくことは大事だし、ある程度キャリアとか、地固めをしていくようなことも大切かもしれない。あるいは「演劇」そのものの体力を、制度的・全体的・ジャンル的に底上げしていくことも必要なのかもしれない。少なくともそう考え、努力している人たちはいるのだし、それを否定するつもりは全然ないです。
でも結局最後は、制度でもジャンルでもなく人なのだ。その人間の痕跡しかわたしは信用しない。制度やジャンルを取り巻く状況はその都度の流行によって転変するし、人の思想や価値観も平気で変節したりするけど、人間の命だけは、ある時間の幅をもって持続している。その痕跡、手触り……。何事も、時間がかかる。そして当然のことだが、誰もが、いつか、唐突に終わりを迎える。