アタマを整理するために書きます。
「疎開」を推奨した前回のエントリーと併せて読んでください。
【悲観的な人、楽観的な人】
「危機意識に苛まれる悲観的な人」と、「楽観的に構えている人」とがいて、両者を隔てるのは、性格の違いもさることながら、得ている情報量の差にもよると思う。首都圏に比較的平穏な気持ちで留まるためには、過度に情報を仕入れすぎないほうが良いのかもしれない。だけどある種の情報に触れてしまった人はもう後戻りできないし、あとはどんどんストレスを増幅させてしまいかねない。
「放射線物質はどれくらい飛散するのか?」これは専門家のあいだでも意見は分かれるところだけど、そもそも正確な数値が測定できてるのかどうかも分からないし、政府や東京電力が正確な数値を公表するとはかぎらない。政治家は「事実を伝える」のが仕事ではなくて、「多くの国民の利益や国益をいかに損なわないか」といった発想で動く。(例えばわたしがもし総理や官房長官だったら、パニックを避けるために、本当に危険な情報はアナウンスしないと思う。そのことによって後で糾弾されるとしても。)
つまり情報が溢れているわりには、その実、何もかもが「分からない」。こうした不確定な状態で、数日前まで「マイクロシーベルト」なんて単位を聞いたこともなかった素人が、にわかに得た知識で危険性を判断しようとしても、それは無理だと思う。で、「分からないから考えてもしょうがない」と開き直る楽観的なタイプと、「分からないから怖い!」と不安になって情報を集めまくる悲観的なタイプとを生み出しているわけだけど、この両者が議論しても水かけ論に終わるだけだろう。
【首都圏に留まること/首都圏を離れることによって生じるリスク】
だけどこの「分からない」状態を、距離をもって冷静に受け止め、そこから自分自身に起こりうるリスクを試算して、判断材料にすることはできる。例えば以下のようなリスクを天秤にかけることで、首都圏に留まるか、離れるか、を判断することはできる。
★首都圏に留まることで起こりうるリスク
・余震による危険性(家屋の崩壊や崩落など)
・放射性物質に関する危険性
・物資の不足の危険性(食糧やトイレットペーパーや医薬品など)
・ライフラインのインフラが安定しない危険性(電気ガス水道通信など)
・所持金が不足する危険性(銀行の機能停止を含む)
・パニックによる二次災害の可能性(交通機関の麻痺、暴動、強盗など)
・以上によって、知人友人に被害が及ぶ危険性
★首都圏から「疎開」することで生じるリスク
・仕事や学業への影響
・疎開先の確保の困難
・交通費や宿泊費
・移動の困難
・付き合いのある近隣の人や店との一時的断絶
・親兄弟や友人を残していく可能性
・空けた住居や店舗に関する不安
・後ろめたさ
特に「仕事や学業への影響」が人によって全然異なることは注意したい。例えば自分の店を経営している人であれば、空き巣の怖れもあるし、端的に収入減に直結するので、店を空けてしまうことのリスクは相当大きい。会社員は、会社の方針や都合もある。あるいはバイト労働者であればそのままクビになる可能性もある。それぞれの背景に応じて、何が最良の選択かは当然違ってくるだろう。
人によって違う。そして他人の人生は肩代わりできない。当たり前のこと。